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日々穏やかに、緩やかに
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こんばんは、t(ry
近頃日記らしい日記を書いてないと思っているのは秘密

↓3つ目。続き。
 人によっては長いかもです
 主題:「星のカービィ」(はるかぜとともに)の後日談








「…相変わらず薄味だな」
「これ以上、胃を悪くさせてはいけませんから」
「僕はこれ、結構好きだけどねぇ。…僕も食べたくなってきちゃった」
「じゃあ、君の分もつくって来ましょうか」
「ありがとー!」


春風の使い(3)



「大王様。お粥をお持ちしました」
「おう」
 突如、何事かに気づいたかのように、納得したように、目の前の小柄な少年は手を叩いた。その仕草は、本当に書物にありそうな、ぽん、という小気味の良い音のしそうなもので。
「あぁ。頭の上に電球、浮かんだよ」
「いいから」
 ドアノブはガチャガチャと音をたてて動くが、ドアの開く様子は無い。盆を持っているから、両手が塞がっているのだろう。彼は潔癖症染みたところがあるから、絶対に床などの上に物を置かない。
 扉を開けてやれ、と言いたくて、目配せした。奴に合わせていた目を、扉のほうにやる。
 奴もそれで分かったらしく、真っ直ぐ、扉の方へ飛んで――本当に、文字通り空を飛んで――ノブに手をかけた。

 がちゃん。ぎぎぎぃぃぃぃ。

「あれ、大王様、どうして」
 扉は強く軋み、盛大な音を立てて、開いた。
「前から気になってたんだけどさ、この城、いつから建ってたの?」
「あー」
「建て直したらー?是非薦めるよー」
「却下。放っとけ、余計な世話だ」
「おや、大王様じゃなかったんですか。ありがとうございます、今日も」
「いえいえー」
「照れんな、ただ来てるだけのくせに」
「うっさい」
 こいつに言われるのは癪だが、確かに、建て直した方が良いかも知れない。
「文句を言える立場じゃないでしょう、大王様は。確かにこの5日の間、お見舞いに来て下さる方はいます。ですが、毎日来る人は彼くらいですよ。彼のことを、徒労させている貴方がどう責められるというのです」
「そのとーり。いい友達を持ったねぇ、大王も」
「取り敢えず、お前は黙ってろ」
「はぁーい」
 奴は元気よく手を挙げて、口に留め具をする真似をした。
 俺には、どう考えてもからかわれているとしか思えないのに、少なくとも、嫌には思わない。この自然なやり取りを、楽しく思う自分がいる。
「聞いておられますか、大王様」
「あー」
「ほら、また。何度申し上げても生返事」
 再びの、深い溜め息。今度のものは、朝のときよりも、明らかに深く、長い。
「と、まずはご飯ですね。はい、大王様」
 彼は盆を差し出してきた。やはり、両手が塞がっていたらしい。その上には、小ぶりな椀に、並々と盛られた粥。
 取り敢えず口やかましい家臣と、おかしな異邦人の少年について考えを巡らせるのはさておいて、飯に手をつけることにした。盆の上のスプーンを手に取り、指の上でくるくると回して弄んだ。
「そうだな。よし、食うか」
「大王、行動早いなー。スプーンが生きてるみたい」
「…」
 二度目の溜め息。やれやれ、呆れたという風に、家臣は一言。
「都合の良くなった時だけ、調子いいんだから」


 ***


「なぁ、このお粥…相変わらず薄味だな。舌が痩せる」
「体の為です。これ以上、胃を悪くさせてはいけませんから」
 口の中に、殆ど塩気のないお粥が流れ込む。舌の上に刺激が来ず、物足りない気分に満たされる。
 もう少しくらい塩を入れてくれてもいいだろう――言葉には出さず、心の中だけに留めておくことにした。
 本当に頑固な奴だ、という言葉と共に。
「充分じゃんよー。こんなに大王のこと、大切に思ってくれる人がいるだけさぁ。大王、我侭ー」
 コイツといい、このうるさい家臣といい、二人は本当に俺の心の図星を突くのが得意なようだ。
「でも僕はこれ、結構好きだけどねぇ。しつこく塩味が残らなくてさ…ううっ、僕も食べたくなってきちゃった」
「じゃあ、君の分もつくってきましょうか」
「おい、こいつは古米でいい。食えりゃあ何でも構わないだろうしな」
「しかし大王様」
「いーよ、僕は何でも食べるから。それにさ、古い食べ物の処理、困ってるんでしょ?」
「…君に言われるとは。困りましたね」
 ホントにコイツは、こういう時ばかり鋭い。
「わかりました。味や安全は保障できませんよ、…非常に申し訳無いのですけれども、勘弁して下さいね」
「ありがとー!おかわりするから、たっくさんお願いねー!」
 苦笑いを浮かべて、彼は扉を開いて、閉めた。
 軋みを上げる扉の音だけが、部屋中にこだまする。
「そうだな。…たしかに、充分かもな」
 遅すぎた肯定の言葉は、響く扉の音に遮られて、隣の少年の耳には届いていなかったらしい。







課題…(・ω・`)
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● 性別 : ♂と見せかけて♂
● 職業 : 学生
● 特徴 : 超絶ポジティブ。
       ジャグリングやってる。
       スピッツとカービィ大好き。
● 一言 //
 春休みなんだそうです。
● ブログ名について //
 特別理由のないフィーリング。
 出発点は『春風駘蕩』
 のんびりしていて温和なこと。

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