★ 六千光年向こう側のエトセトラ

とりあえず言わせて頂きますが、
　ク　ロ　バ　ッ　ト　無　双

↓先日のアレの続きでっすよ
　毎度ですが若干長い気がしないでもない
　主題：「星のカービィ」（はるかぜとともに）の後日談

　ちなみに（ＰＣのみ）画面右側の「カテゴリ」からご覧になれます

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窓から下を覗くと、丸い影が見える。
今日もまた、奴はやってきたらしい。
台所では、俺の家臣が昼食の準備をしている。

春風の使い（２）

　がちゃん。ぎぎぎぃぃぃぃ。

「大王、おっはよー」
「もう昼だぞ」
　ノックも無く開いた扉の向こうから、さっきの影が顔を覗かせた。その少年は、部屋に入るなり真っ直ぐこちらのベッドの傍に来て、隣の椅子によじ登った。
「お前のお陰で、結構な怪我を負わされたもんだ。全く、散々だ」
「大王、前からそればっかー。しつこいー」
「お前が言えた立場か」
　不満に満ちた表情。すぐにそれは笑いに変わった。
「あははは、ごめんごめん。まさか、そんなに効くとは思ってなかったからさぁ」
「その態度、…ナメてんのか」
「ぷぎゃ」
　へらへら笑いながら、椅子にちょこんと座る少年。
　謝罪の態度のまるで見えない目の前の彼―彼女か？わからない―の頭の上に手をおいて力を込めると、いとも簡単に、その柔らかい体は潰れてしまった。
　こんな小柄で、軟弱そうな丸っこい身体のどこに、あれ程の力があるのだろう。そう思って、奴を押し潰す手をどけた。
「あんまり柔らかくてスベスベで気持ちいいからってさー、そんなに強く押さなくたって」
「アホ言え」
「ぷぎゅう」
　もう一度、潰してやった。軽く、癪に障った。
　俺は不器用なのを自覚している。だから、目の前の少年にからかわれても、…負けた気がして悔しいが、手を出して反撃するくらいしかできない。
　少年の見た目は子供のそれだ。喋り方や挙動も、とても子供っぽいから、本当に子供なのだろう。もっとも言動には常にわざとらしい面もあるから、実際には見た目以上の年齢かもしれない。
　そもそもコイツは、どこの馬の骨かも知れない、言わば「異邦人」だ。だというのに、突然この国にやってきて、俺を倒して、終いには敵である俺の見舞いにまで来るようになった。
「…ワケわからないな、本当に」
「なにー？」
「何でもねーよ」


　視線を感じる。奴はさっきから俺の腹を見ている。そこになんとなく悪戯っぽさを含む笑みを感じると、次の瞬間。
「つんつん」
「うっ、いてーな、この野郎」
「あわわわわ」
　なんということだ、手で俺の腹の傷をつついてきた。予想より勢いがあって、一瞬腹を抱えた。
「怪我人は大事にしろっ」
「おととととと、とっ」
　反撃に出てやろうとばかりに、俺の傷をつつこうとする奴の手を払うと。不意に手を払われて平衡を失った奴は椅子から落ちそうになっていて、必死でバランスを取ろうと手をぐるぐる回している。その様子のなんと可笑しなこと、俺は思わず声に出して笑ってしまった。
　こてん。ぺしゃ。
　努力空しく、椅子から落ちた。平たく、潰れた。
「…わはははは」
「むー」
　奴は不満そうに、頬を膨らませている。
　すぐに異国の雰囲気に馴染めるのは、強いくせに少し間抜けで、無邪気で、愛嬌があるからだろう。そのギャップに、人は惹かれる。
　もちろん、コイツの今いる「異国」というのが、他の国とは一線を画すほど平和な国だから、というのもあるだろう。
　これだけは、その「異国」の誇れるところだ。


「とにかく、大王は早くケガを治しなよー。そんなぐーたらの不真面目大王様でも、一応ここのトップなんでしょー」
　古びた木材に柔らかい布団を掛けただけの粗末なベッドによじ登りながら、奴もまた。
「お前まで、あいつと同じことを。…屈辱だ」
「あいつぅ？」
　頭の上に露骨に疑問符を浮かべて、不思議そうに尋ねてきた。まさか本当に疑問符が見えるはずは無いが、でも何となく見えそうな仕草で。
　…本当に、分かっていないのだろうか。そんな筈は―
「わかってんだろ、ほら―」
―ないだろうに。
　言いかけた時、古びた木製のドアを叩いた時の、独特の甲高い音が響いた。



すべりこみ７日っ