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日々穏やかに、緩やかに
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日が空きましたね。晦です、こんばんは
ちなみにこれを投稿した後、課題を徹夜してやるつもり
それから、記事の更新、少し休むつもり
教科書写すとかそりゃないよ先生!

↓4つ目。ラスト。人によ(ry
 主題:「星のカービィ」(はるかぜとともに)の後日談







「おかわりー!」
…暫しの静寂。


春風の使い(4)



「僕はこの城のコマイショリにコウケンしてるんだから、嫌そうな顔しないー。処理してもらってる側がそれじゃ、食べ甲斐ないじゃんよぉ」
「だからってお前、遠慮が無さすぎるだろう」
「ちゃんと出されたものは食べなきゃ、オヒャクショウさんに失礼なんだよー!」
「…それ、どこの言葉だ」
「忘れた」

 そうして再び、目の前の水っぽい飯にむしゃぶりつく。お粥を作った彼は、奴の異常な摂取のスピードのために、また厨房に出掛けている。
「おかわりー!」
 再びの、おかわり要求。これで8杯目となる。
 他より大きめの器に盛っているから、量で換算すると。
「…お前、もう15人分くらいは食べてるんじゃないか」
 よくも病人の前でぬけぬけと。そうとは言わずに、怨めしげな視線を送った。
 奴の方はといえば、それには全く気付いていないのか――そういうフリをしているのか?――ただひたすら、目の前の食事にがっついていた。
 …ニブチンめ。
 俺は食いたくても食えないというのに。
 奴の鈍感さが本当にワザとだと悟ったのは、12杯目を平らげたのち、俺に勝ち誇ったような不敵な笑みをこちらに向けた時のことになる。


「ほら、大王、はやくー」
「もっとゆっくり食え」
 この状況を拷問と言わなければ、何と言おうか。
 あろうことか、粥を器に寄せる係は俺だった。相変わらず鈍感な奴に、怨めしげな目線を送っていると。
「…体を動かしたいと仰ったのは、大王様でしたよね」
「……」
 さらに10人前のお粥を作って戻ってきた家臣が、ぼそりと一言。
 釘を刺された。…腹の、真ん中辺りに。思わずクソ野郎、と漏らしそうになって、慌てて口をつぐんだ。
 彼は普段言葉遣いにはとやかく言わないものの、こういった、下品な言葉を聞くと、彼は。想像するだけで、鳥肌が立つ。
「わかったよ、わかった」
「大王、負けちゃったねぇ」
「……」
 全くコイツらは。
 何も言わず、粥を寄せた。


 ***


 奴がおおよそ27人前のお粥を小柄な体に収めきった時には、時計の短針は4の文字を過ぎていた。前よりも食事の量が多く、時間も長かった。
「お気に召されたようで、本当によかったです」
「すっごくおいしかったよー。ありがとね」
「…それは何よりだな。お楽しみなことで」
 ここずっと、自分の身体を思って湧き上がるアパタイトを抑えていた俺は、疲れ果てていた。体力面でというよりも、むしろ精神面で。
 食事中――特に彼がさらに10人分を追加したときから、二人ともずっと笑顔で雑談していた。その内容は、普段と変わらない、取り留めの無い、雑談そのもの。奴の生活について。俺の容体について…これは語るほどの事でもないと思うのだが…。そして、この国について。
 その話を聞いていると、騒ぐ俺の心も落ち着いてくるようで――それを仮に、認めたとしても。
 コイツらは故意犯ではないと言われたら、絶対に否定する。


「さて、それじゃあ僕は、おいとましますかー」
 椅子からぴょこんと飛び降りて、少年は言った。
「明日も来るね。大王、早く良くなりなよー」
「余計な世話だ。というより、お前はただ食って帰るだけだろうが」
「だからー、僕はコマイショリに」
「アホ言え。とにかく今日はもう、帰った帰った」
「そんなこと言って、本当は話し相手がいないとさびしいんでしょー。大丈夫大丈夫、僕がちょくちょく遊びに来てあげるからさぁ」
「…何を言い出すかと思えば」
 俺の不器用さは折り紙つきだ。
「じゃ、また明日ー」
「…おう」
 また明日、と素直に返せば良いものを、そっぽを向いて、そっけなく返してしまった。

 ぎぎぎぃぃぃぃ。ばたん。

 奴が出て行ってから少し経って、彼が話し掛けてきた。
「知ってます?彼の家、城からはかなり遠いんですよ」
「…そうか」
「彼も、優しい人ですね」
 知らなかった。彼は楽しそうに言う。
「何だかんだ言って、楽しそうでしたよ、大王様」
「楽しいもんか」
 本心を突かれて、またそっぽを向く。彼は笑って、分かり易いなぁ、と呟くと、そのまま部屋を出て行った。
 窓から外を見ると、丸い影が一つ。スキップしながら、奴は自分の新しい住み家へと帰ってゆく。
 少し視線を上へずらすと、赤く染まった雲がまばらに散って、間から太陽が姿を覗かせている。
 俺は、カーテンを閉める気にはなれなかった。
 プププランドの夕暮れが、いつもより綺麗だ。


 人々の夢が奪われるのは、もう少し後の話。



(了)
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● 性別 : ♂と見せかけて♂
● 職業 : 学生
● 特徴 : 超絶ポジティブ。
       ジャグリングやってる。
       スピッツとカービィ大好き。
● 一言 //
 春休みなんだそうです。
● ブログ名について //
 特別理由のないフィーリング。
 出発点は『春風駘蕩』
 のんびりしていて温和なこと。

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